インプラントとかみ合わせについて

天然の歯にしろ、差し歯や入れ歯などの補綴物にしろ、共通して重要となるのは「かみ合わせ」です。歯や人工歯はそれぞれ単独で存在しているのではなく、他の歯ときちんとかみ合うことではじめて、その役割を果たします。それくらいかみ合わせというのは重要なものなのです。それはインプラントにも同じことがいえます。ここではそんなインプラントとかみ合わせについて詳しく解説します。

 

1.歯が持つ主な機能

 

成人の歯は全部で28本存在し、上下で歯列を形成することで、食べ物を咀嚼する機能を発揮します。その際、上下の歯がそれぞれ正常にかみ合っていることは、ある意味で最低条件といえます。なぜなら、他の歯とかみ合っていないということは、歯が持つ主な機能である咀嚼に関与していないことを意味するからです。歯は上下の歯できちんとかみ合うことで、食べ物を砕いたり、すり潰したりすることができます。逆に、きちんとかみ合っていない歯というのは、咀嚼機能に貢献しないだけでなく、いろいろなトラブルを引き起こすことがあります。

 

2.かみ合っていない歯による悪影響

 

かみ合っていない歯というのは、その歯だけ歯列が逸脱しているケースが多いです。その結果、本来かみ合うはずだった歯が相手を見つけられず、過剰に伸びたり引っ込んだりすることがあります。また、歯列は1本1本の歯の集合体ですので、1組の歯のかみ合わせが極端に高くなると、それ以外の全ての歯が咬み合わなくなることさえあり得るのです。このように、たった1本であっても、かみ合っていない歯による全体への悪影響は非常に大きくなるリスクをはらんでいるといえます。

 

3.インプラントがかみ合わせを改善する

 

インプラント治療が適応される症例というのは、歯を喪失していますので、放置すると歯列に生じた隙間をその他の歯が埋めようと動き出し、やがては歯列全体が乱れ、かみ合わせも悪化します。そこで必要となるのがインプラントを始めとした補綴治療です。

 

こういったケースで歯、入れ歯やブリッジなどの保険診療が第一選択として挙げられますが、かみ合わせを改善するという点に関していうと、圧倒的にインプラントが優れているといえます。なぜなら、インプラントであれば、歯を失った部位に人工歯根を埋め込み、上部構造を設置することで、喪失前の状態に限りなく近づけることができるからです。自ずとかみ合わせも喪失前の状態へと回復させることができるのです。これがブリッジや入れ歯となると話は変わります。なぜなら、ブリッジや入れ歯には人工歯根がなく、残存している歯列に補綴装置を被せる形で、失われた歯を人工歯によって復元するからです。そうした大型の補綴装置による治療では、もともとのかみ合わせを復元することは極めて難しいといえます。何より、歯根の部分があるかないかで、ものをかんだ時の感覚が違うだけでなく、歯列全体に及ぶ圧力なども大きく異なるのです。

 

4.かみ合わせの大切さ

 

私たちは毎日欠かすことなく食事をします。それを一生涯繰り返していきます。ですから、「きちんとものがかめる」状態というのは、何にも代えがたいことであり、その機能が失われかけたら、できるだけ回復できる方法を模索することが大切です。その際、経済的な入れ歯やブリッジを選択することも間違いではありませんが、これから1~2年の話ではなく、10~20年先のことまで考えたら、多少費用がかさんでも、かみ合わせの状態を良好にしてくれるインプラントを選択するというのもひとつの正しい決断といえます。それくらい、かみ合わせというのは大切なものといえるのです。