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インプラントが出来る、適齢年齢は?

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インプラントは非常に優れた補綴治療ですが、誰にでも適応できるわけではありません。顎骨の状態や口腔疾患の有無など、適応から外れるケースはいろいろありますが、そもそも患者さんの年齢によってはインプラント治療を選択肢から除外しなければならないこともあります。ここではそんなインプラント治療に適した年齢について詳しく解説します。

 

1.成長期の子どもには適応できない

 

まず、インプラント治療の適応から除外される年齢についてですが、発育途上にあるお子さまに関してはインプラント治療を行うことができません。例えば、小学生や中学生などがその年代に当てはまりますが、この時期は歯だけでなく、顎の骨も発育途上にあるため、インプラント体を埋め込むことはあまりにもリスクが大きいといえます。

 

せっかく苦労してインプラント体を埋め込んだとしても、その後の発育状況によっては、インプラントしての機能を果たさなくなるだけでなく、また別のトラブルを引き起こす原因にもなりかねませんので、原則的に適応できません。判断が難しいのは高校生以上で、発育が完了し、成人と同じような条件が口腔内に備われば、インプラント治療を行えないわけではありません。ただ、万全を期すのであれば、顎骨の発育などが完全に止まる成人になってから、インプラント治療を受けた方が安全といえます。

 

2.高齢者は要注意

 

私たちの顎の骨は、高齢になればなるほど脆弱化します。骨密度が低下するだけでなく、顎の骨の幅や広さ、それから深さなども縮小していく傾向にありますので、インプラント治療が難しくなります。ただし、最近では骨造成の技術も発達して、骨量が不足した症例に対しても前処置を施すことでインプラント治療が可能となるケースが多くなってきています。そのため、高齢者だからか適応外になるということは必ずしもありません。むしろ、インプラントオーバーデンチャーのような総入れ歯の症例に対する治療の需要も高まってきていますので、高齢だからという理由で始めから諦める必要もないといえます。

 

3.顎の骨が健全な年代が最も適した年齢

 

加齢に伴う顎骨の吸収やインプラント治療に悪影響を及ぼす全身疾患が少ない年代は、インプラント治療に適しているといえます。20~30代というのは、そういった問題とは無縁な年代なので、インプラント治療を受けても良好な結果が得られることが多いです。一方、女性の場合、40~50代にかけて更年期障害などの影響もあって、骨密度が低下することが多いため、徐々にインプラントに不適な状態となっていくため注意が必要です。要は、顎の状態が健全な年代がインプラント治療にとって、最適といえるのです。

 

4.妊娠期はインプラントできない?

 

さて、ここまでインプラントに最適な年代について解説してきましたが、今のところインプラント治療が適応外となるのが成長期の子どものみに留まっています。それ以外の年代は、条件が整えば高齢者であってもインプラント治療を実施できます。そこで気になるのが、妊娠期の女性です。

 

妊娠中は、抜歯などの歯科治療を控えるくらいですから、インプラントのような侵襲性の高い治療も行えなさそうですよね。実際、妊娠期にあえてインプラント治療を実施する歯科医師はいません。なぜなら、母体への負担だけでなく、胎児への悪影響も予想されるからです。ですから、これから妊娠や出産を控えている人は、妊娠期を避けた上で、インプラント治療を受けることをお勧めします。妊娠前に予め受けるか、出産後落ち着いてから受けるかは歯科医師と相談して決めてみてはいかがでしょうか。

Q

インプラントメーカーの種類

A

おそらく多くの人は、インプラント治療に用いられる材料や器具などはどれも同じメーカーのものと思われていることでしょう。インターネット上で掲載されているインプラントの写真やイラストは、どれも似たような形をしているため、そう思われるのも無理はないといえます。ただ、実際はとてもたくさんのインプラントメーカーが存在しているのです。

 

1.インプラントメーカーとは

 

インプラントメーカーとは、インプラント体やアバットメントなどのパーツだけでなく、それらを装着する際に使用する器具を提供しているメーカーで、インプラントシステムと言い換えても良いかもしれません。日本で厚労省が認可しているインプラントシステムは数種類に限られますが、世界全体では100種類以上のインプラントシステムが開発され、患者さんに提供されています。

 

2.日本で普及しているインプラントシステム

 

日本で普及しているインプラントシステムには、ストローマンやアストラ、ブローネマルクシステムなどが有名です。これらは海外のインプラントメーカーが開発したものですが、最近では日本のインプラントメーカーにおける開発も活発で、GCやプラトンなどが有名といえます。

 

3.インプラントシステムの違いとは

 

インプラントメーカーはそれぞれ異なるインプラントシステムを採用していますので、例えばストローマンを採用している歯科医院でインプラント治療を受けて、その後のメインテナンスについてアストラを採用している歯科医院で受けようとしても難しいケースが多いです。なぜなら、インプラントシステムが違えば、ネジを回すドライバーひとつとっても大きく違ってくるため、対応するのがなかなか難しいのです。また、術式なども大きく異なることがあります。

 

4.どのインプラントシステムがいいの?

 

今現在、日本の多くの歯科医院で採用されているようなインプラントシステムであれば、安全性に大きな問題はないといえます。特に上述したようなインプラントシステムであれば、厚労省の認可も受けているケースが多いので、大きなトラブルが生じるリスクは少ないです。逆に、上述したようなインプラントシステムではない、マイナーなものは要注意といえます。マイナーなインプラントシステムの全てが悪いわけではありませんが、国の認可を受けていなかったり、広く普及していなかったりするということは、それなりに問題点もあることを意味します。また、マイナーであるがゆえに、その他の歯科医医で対応することが困難なケースが多く、口腔内にトラブルが生じた際には一から治療をやり直さなければならないことも珍しくないのです。

 

5.歯科医院の治療実績を重視する

 

インプラントシステムは複数あり、どれを採用しているかは歯科医院によって異なりますが、各システムの違いを明確に見極めることは難しいです。また、それほど決定的な違いはないともいえますので、どちらかというと、インプラントシステムの違いで選ぶのではなく、歯科医院の治療実績を見て選ぶことをお勧めします。インプラント治療はまだまだ新しい歯科治療ですので、知識だけでなく治療実績が豊富な歯科医師にお願いするのが一番です。

 

6.まとめ

 

このように、インプラントメーカーは日本だけでも複数あり、世界的には100種類以上存在しますので、それらの違いを理解するのは困難です。ですから、歯科医院を選ぶ際に指標とするのは、採用しているインプラントメーカーやインプラントシステムではなく、歯科医師の技量や治療実績に重きを置くようにしましょう。少なくとも、厚労省が認可しているインプラントシステムであれば、安全性に問題はありません。

Q

一回法と二回法の違い

A

インプラント治療と通常の歯科治療との決定的な違いは、人工歯根の埋入手術の有無です。インプラント治療では、インプラント体と呼ばれる人工歯根を外科処置によって埋め込まなければならないため、本格的な外科手術を伴います。ここではそんなインプラントオペの種類や内容について詳しく解説します。

 

1.インプラントオペとは

 

インプラントオペとは、人工歯根であるインプラント体を顎の骨に埋め込む手術です。歯肉をメスで切り開き、顎の骨を露出させ、そこにドリルで穴を開けます。ドリルによって開いた穴に、チタン製の人工歯根を埋め込むのがインプラントオペの主な目的です。ちなみに、手術の際には麻酔が効いていますので、痛みを感じることはありませんのでご安心ください。

 

2.インプラントオペの種類

 

インプラントオペは、大きく2つの種類に分けることができます。1つは一回法で、文字通り一回のオペでインプラント埋入処置が終わります。もう1つは二回法で、こちらも文字通り二回のオペでインプラント埋入処置が終わります。ここからはそれぞれの処置内容の違いについて解説していきます。

 

3.一回法の特徴

 

インプラントの一回法は、実施するオペの回数が1回で済みますので、患者さんへ体の負担が小さいといえます。やはり、インプラントオペも一種の外科処置ですので、複数回行うのはそれだけ患者さんへの体の負担も増えるため、できれば一回で終わらせたいものです。ただし、インプラントオペの一回法を適応できる範囲は、二回法よりも狭くなっています。つまり、インプラント治療の患者さん全てに一回法を適応できるというわけではないのです。むしろ、一回法を適応できる症例の方が少ないため、今のところインプラントオペは二回法で実施されることの方が多いです。

 

4.二回法の特徴

 

インプラントの二回法は、オペを二回行う治療法で、最も一般的に実施されている術式です。二回法のメリットは、インプラント体と顎の骨とが結合するのをじっくり待つことができるという点です。インプラントの二回法においても、一回目のオペでインプラント体を埋入するという点は、一回法と変わりません。違う点は、一回目のオペでは埋入したインプラント体を塞いでしまうところです。切開した歯茎を縫合して、数ヵ月、インプラント体が顎の骨と結合するのを待ちます。その後、定着したころに再び歯茎を開き、インプラント体を口腔内へと露出させ、アバットメントを装着します。一回法ではここまでの処置を一回で行うこととなります。

 

5.どちらが優れているの?

 

さて、一回法と二回法とでは、特徴が大きく異なりますが、どちらが優れているかというと、前者と言わざるを得ません。なぜなら、一回法では一回のオペでアバットメントの装着まで行えますし、治療期間全体の短縮にもつながります。患者さんへの侵襲も少なくなります。そういった点から、一回法の方が優れた術式といえるでしょう。ただし、一回法が適応できるケースというのは、顎の骨の状態が非常に良い場合であり、全ての患者さんが選択できるわけではありません。二回法を適応することが望ましい患者さんに対して、強引に一回法を適応すると、かえって悪い治療結果を招くことになるため、そういう意味では、インプラント体を確実に定着できる二回法の方が優れているといえます。ですから結論としては、症例に応じて最適な術式も変わるということしかいえないのです。

 

6.まとめ

 

インプラントオペには一回法と二回法の2種類がありますが、ケースバイケースで適した方を選ぶことが重要といえます。

Q

上部構造について

A

インプラント治療のかなめとなるのは、今でもなくインプラント体です。天然歯における歯根に相当するパーツで、フィクスチャーと呼ばれることもあります。このインプラント体が適切に埋入できるかどうかで、インプラント治療の成功が左右されます。そして、次に重要となるのがインプラントの上部構造です。インプラント体については、詳細をご存知の方も多いと思いますので、ここでは上部構造について詳しく解説します。

 

1.上部構造とは

 

インプラントの上部構造とは、天然の歯における歯冠部に相当します。普段、外から見えるのはこの上部構造の部分であり、咀嚼機能を直接的に果たすのもこの部分であるため、どのような素材を使うかは非常に重要な選択となります。

 

2.上部構造に使われる素材

 

上部構造は、簡単にいうと被せ物やクラウンといった補綴装置と同じものです。人工の材料によって、歯冠部分を再現します。ですから、自ずと歯質に近い素材が選択されます。具体的には、ジルコニアやセラミックなどが主流となっています。これらは硬さや質感、色などが天然の歯に近いため、装着後の違和感が非常に小さいです。また、噛んだ時の感覚も天然の歯に近いといえるでしょう。ちなみに、インプラント治療では、保険適用で装着するような銀歯を用いることはまずありません。

 

3.上部構造はアバットメントで連結される

 

一般的なクラウンは、天然の歯根が残っていますので、歯質を適切な形に形成したのち、コアなどを築造した上で補綴物を被せます。一方、インプラント治療の場合は、顎骨に埋め込んだインプラント体に直接、上部構造を装着するのではなく、間にアバットメントと呼ばれるネジのようなパーツが介在します。このアバットメントには、人工歯根と同じ素材であるチタンが使われたり、上部構造と同じジルコニアが使われたりと、ケースに応じて異なります。ただ、上部構造から金属色が透けるのを防ぐ上では、アバットメントもジルコニアやセラミックに統一した方が良いといえます。

 

4.上部構造はいつ作るの?

 

上部構造を設置するのは、インプラント体が顎骨に定着したあとです。ですから、インプラント治療開始から既に数ヵ月経過しているのが一般的です。もちろん、インプラントオペの一回法が適用されるようなケースであれば、もっと短期間で上部構造の製作に入ることができますが、今現在は二回法が主流となっていますので、数ヵ月はかかるものとお考えください。そうして、インプラントと顎骨との結合が安定してから、上部構造の製作へと入ります。

 

5.上部構造の製作にかかる期間

 

上部構造の製作にも、数ヵ月かかることは珍しくありません。あくまでそれは最終的な補綴物が完成するまでの期間で、治療途中は上部構造の形をした仮歯を装着することとなりますので、治療期間中に審美性が著しく低下することはありません。また、ある程度の咀嚼機能も回復させることができるため、日常生活に大きな支障が生じることも少ないです。

 

6.上部構造を装着したら治療は終わり?

 

上部構造の装着は、インプラント治療が完了したことを意味します。ですから、その時点でいったん通院の必要性がなくなりますが、もう二度と受診をする必要がないわけではありません。なぜなら、インプラントはメインテナンスが重要な歯科治療ですので、治療が完了した後も、定期的に受診して、上部構造やアバットメント、インプラント体の状態を診ていく必要があるのです。さらに、歯肉や歯槽骨の状態などもチェックして、インプラントが良好に機能しているか検診します。これはインプラントを使い続ける限り、継続していかなければならない取り組みです。

Q

どんな場合に骨造成が必要なの?

A

インプラント治療では、骨が不足している症例で「骨造成(こつぞうせい)」という手段を講じることがあります。骨を造る処置なだけに、かなり大掛かりな手術が必要になりそうですが、実際どのような症例に適応されるのでしょうか。

 

1.骨造成とは

 

骨造成とは、これから行う外科処置に対して、患者さんの骨量が足りていない症例に対して適応されます。具体的には、骨が不足している部位に骨移植を行うことで不足分を補い、あるいは骨の増殖を促します。いずれにせよ、骨造成のための外科処置が必要となります。

 

2.骨造成が必要になる理由

 

インプラント治療を成功させる上で最重要となるのは、患者さんの顎の骨の状態です。インプラント体という金属製のネジを埋め込めるだけの骨量や骨密度があることが前提で、不足している場合に骨造成が実施されます。十分な骨が存在すれば、インプラント体は骨内に定着させることができます。厳密には、骨とインプラント体(チタン)との結合が生じるのです。

 

3.インプラント体が収まる骨量が必要

 

インプラント治療では最低限、人工歯根の部分であるインプラント体が問題なく収まるだけの骨量が必要になります。これはある意味、当然の話ですね。例えば、インプラント体の長さよりも骨の長さが短かったら、インプラントを埋入した際に、骨を貫いてしまいます。実際、インプラント治療ではそうした偶発症が発生することがあります。インプラント体が骨を貫通してしまうと、周辺組織にもさまざまな悪影響が及びますので、絶対に避けなければなりません。また、骨の長さだけでなく、幅や奥行きも重要となります。これもインプラント体が余裕を持って収まることができるだけの量が不可欠といえるでしょう。

 

4.骨密度も重要なポイント

 

骨量がインプラント体をすっぽり収めるだけ確保されていれば、骨の状態は非常に良好であるといえます。けれども、それだけでは適切なインプラントオペを施せないことがあります。なぜなら、インプラント体であるチタン製の人工歯根と顎の骨とが結合を果たしてはじめてインプラント治療の成功へと導けるからです。この結合を専門的にはオッセオインテグレーションと呼んでいます。オッセオインテグレーションを獲得するためには、顎骨の細胞が元気でなければなりません。ですから、骨粗鬆症のように、そもそも骨細胞が少なかったり、骨組織がまばらであったりすると、健全なオッセオインテグレーションを獲得できないことが多くなるのです。そういった意味で、インプラント治療では、骨密度の検査も精密に行っていきます。

 

5.骨不足は骨造成によって解消

 

上述したような症例では、そのままインプラントオペへと進むことはできませんが、骨造成を行うことによって骨量の不足を改善できますので、インプラント治療が適応外になるというわけではありません。ただ、ケースにもよりますが骨造成に数ヵ月かかることも珍しくはありませんので、インプラント治療にかかる期間が全体的に長くなる点はご了承ください。とはいえ、インプラントは大事に使うことで、数年から数十年、上手くいけば一生涯使い続けることができる補綴装置ですので、前処置に数ヵ月を要したとしても、それほど大きなデメリットとはいえないかと思います。

 

6.まとめ

 

骨の状態が悪いと、それだけでもうインプラント治療は無理だと諦めてしまう方もいらっしゃいますが、近年は骨造成などの治療法も進歩していますので、まずはその可能性を模索していきましょう。時間をかけて骨を造成していくことで、インプラントを固定させるためのしっかりとした土台が完成します。健康な顎骨を作ることは、インプラント治療だけでなく、口腔全体の健康にも寄与します。

Q

インプラント周囲炎とは

A

皆さんは「インプラント周囲炎」という病気をご存知でしょうか?病気の名前にインプラントという文字が入っているので、これからインプラント治療を受けようか検討されている人にとっては、強い不安を感じてしまうかもしれませんが、実際、インプラント治療と密接な関連のある病気ですので、詳しく知っておくことは大切です。ここではそんなインプラント周囲炎について解説します。

 

1.インプラント周囲炎とは

 

インプラント周囲炎とは、インプラント治療に伴う歯周病で、インプラントを埋入した周囲の歯肉に炎症が生じる病気です。名前通りの病気ですが、まず不思議に思うのが人工歯や人工歯根で構成されるインプラントでなぜ歯周病が発生するのか、という点ですよね。

 

2.インプラントも歯周病になる

 

結論からいうと、人工歯根と人工歯から成るインプラントでも歯周病にかかります。なぜなら歯周病というのは、歯周病菌に感染し、それらが増殖することによって発症する病気であるため、必ずしも天然歯が必要なわけではないのです。極論をいえば、歯茎の近くにプラスチックのブロックが存在するだけでも、そこに歯周病菌が堆積すれば歯周病を発症することがあります。ですから、人工歯であるインプラントでも同じことがいえるのです。

 

3.インプラントのケアは念入りに

 

インプラントは人工歯なので、そもそも虫歯や歯周病にはかからない、という先入観がある人が多く、セルフケアも怠りがちになるケースは珍しくありません。当然、虫歯にかかることは絶対にないのですが、歯周病にはかかるのでセルフケアはきちんと行いましょう。むしろ、インプラントは人工歯であるがゆえに、天然歯よりも汚れが付着しやすい傾向にあります。そういった特性もあって、インプラント周囲炎というインプラント特有の歯周病が存在しているともいえます。

 

4.インプラント周囲炎による顎骨の吸収

 

インプラント周囲炎にかかると、インプラント周囲の歯肉が腫れたり、時には出血を起こしたりします。また、重症化すると炎症が歯肉だけでなく、歯槽骨にまで波及するため、歯槽骨の吸収が促進されていくのです。ここで思い出していただきたいのが、インプラントの定着様式です。

 

5.インプラントは顎骨と結合することで定着している

 

インプラントはチタンでできた人工歯根で、顎の骨の組織と結合することで定着しています。専門的にはこれをオッセオインテグレーションと呼んでいます。そんなオッセオインテグレーションが正常に起こっているからこそ、インプラントという優れた補綴装置を装着可能なのであり、もしもインプラント周囲炎によって歯槽骨が吸収され、オッセオインテグレーションまで失われてしまったらどうなるでしょうか。

 

6.インプラント周囲炎による人工歯根の脱落

 

インプラントがオッセオインテグレーションを失うと、骨との結合も失われ、インプラントは脱落します。その結果、上部構造も外れてしまうため、治療前の欠損状態へと戻ることとなります。しかも、顎骨にはインプラントを埋入していた穴だけが残りますので、再度、インプラントを埋入するか、別の補綴装置による治療を検討するか選ばなければならなくなります。いずれにしても、治療にかかる手間や費用は大きなものになるでしょう。

 

7.まとめ

 

このように、インプラント周囲炎というのは、インプラント治療の大敵である歯周病をインプラント自ら発症させてしまう厄介な病気です。最終的にはインプラントを脱落させる可能性もありますので、是非とも予防したいものです。そのためには徹底したセルフケアと、定期的なメインテナンスが不可欠といえます。

Q

インプラントと喫煙の関係

A

喫煙習慣のある方で、これからインプラント治療を検討している場合は注意が必要です。なぜなら、インプラントと喫煙には密接な関係があるからです。ここではそんなインプラント治療と喫煙習慣の関係について詳しく解説します。

 

1.治療前に禁煙を指示される

 

今現在、喫煙習慣があって、近いうちにインプラント治療を開始予定の方は、禁煙をするよう歯科医師から指示があるかと思います。禁煙を実行できるまでにはそれなりに時間がかかりますし、場合によってはインプラント治療の開始時期の延期にもつながりますので、できるだけ早い時期に禁煙を実行することをお勧めします。

 

2.なぜ禁煙が必要なのか?

 

喫煙をされている方にとっては、なぜインプラントという歯の治療を受けるのに、禁煙をしなければならないのか、納得いかないかもしれませんね。確かに、喫煙といえば呼吸器に関わる病気のリスクになることが有名ですし、一見すると歯とは何ら関係ないもののように思えます。けれども、喫煙習慣は口腔衛生状態と密接な関連があり、とりわけ歯茎や口腔粘膜に悪影響を及ぼすリスクが高いのです。

 

3.喫煙による口腔内の変化

 

タバコの悪影響をまず始めに受けるのは、口腔です。タバコの煙が一番始めに接する部分ですので、それだけ悪影響も大きいです。また、口腔粘膜というのはとてもデリケートな組織といえますので、有害な物質を多量に含むタバコの煙に晒されることで、以下に挙げるような具体的な影響が現れてきます。

 

3-1 血管を収縮させて血流を悪くする

 

タバコに含まれるニコチンには、血管収縮作用があります。血管が収縮すると、組織に供給される酸素や栄養素、血球成分などが減少しますので、組織の健康状態が悪くなるのです。すると、歯茎が傷つきやすくなったり、生じた傷が治癒しにくくなったりします。インプラント治療において最も注意すべきなのは、歯周病リスクの増加です。

 

3-2 歯周病にかかりやすくなる

 

歯茎への血流が滞ることで、局所の免疫機構が低下し、歯周病菌が活動しやすい環境が確立されます。その結果、歯周病のリスクが高まり、重症化もしやすくなるのです。ちなみに、インプラント治療における歯周病は、最も忌避すべきリスク因子のひとつです。

 

3-3 歯茎が硬くなる

 

喫煙習慣は、歯茎を硬くしたり、厚くしたりします。歯茎を始めとした口腔粘膜が硬く肥厚することは良いことのように思えますが、本来ある柔軟性が低下することはデメリットの方が大きいです。また、歯茎が硬くなることによって、歯茎からの出血や腫脹が確認しにくくなるため、歯周病の発症を自覚することが困難となるケースも珍しくありません。

 

4.歯周病によるインプラントへの悪影響

 

喫煙によって歯周病が誘発されると、歯茎や歯槽骨が下がっていきます。これらの組織は、歯を支える役割を果たしていますので、吸収されていくことでその支持機能は失われます。その結果、インプラントを定着させることが困難となり、最終的にはインプラントが脱落するのです。もちろん、インプラント治療を開始前にそうした重度の歯周病と喫煙習慣がある場合は、治療に進むことができませんのでご注意ください。インプラント治療を実施するためには、まず喫煙習慣を改善し、歯周病の治療を終えなければなりません。

 

5.まとめ

 

このように、喫煙習慣は結果的に歯周病を引き起こし、インプラント治療を困難にさせますので、インプラント治療を検討中の方は、出来るだけ早期に喫煙習慣を改善しましょう。必要に応じて喫煙外来を受診するなど、徹底した取り組みが必要となります。そうしなければ、インプラント治療が台無しとなってしまいます。

Q

静脈内鎮静法のリスクとは

A

インプラント治療における外科手術に不安を感じている患者さまは少なくありません。侵襲性は比較的少ないとはいえ、メスを使って歯肉を切開し、顎骨に金属を埋め込むのですから、不安になるのも当然です。ただ、インプラント治療では静脈内鎮静法という不安や恐怖を和らげる麻酔を施すことができるため、それを聞いて安心される方も多いです。けれども、そこで気になるのが静脈内鎮静法のリスクですね。

 

1.静脈内鎮静法とは

 

静脈内鎮静法とは、鎮静剤を静脈経由で全身に作用させる麻酔法で、歯科治療では広く活用されています。ジアゼパムやミダゾラム、プロポフォールといった薬剤を用いて精神を鎮静し、意識を失うことなく不安や恐怖などを取り除きます。

 

2.静脈内鎮静法の適応例

 

静脈内鎮静法は、インプラント手術や大掛かりな抜歯処置などの際に活用されることが多いです。また、歯科治療恐怖症を患っている患者さんに対しては、通常の虫歯治療や歯周病治療においても活用されることがあります。その他、発達障害などがある患者さんにも処置中の多動や予期せぬ反応などを防ぐために、静脈内鎮静法が活用されることあります。

 

3.静脈内鎮静法のリスク

 

静脈内鎮静法は、意識を失うことなく、治療に対する不安や恐怖を緩和することができる素晴らしい麻酔法ですが、それなりにリスクも存在します。

 

3-1 血圧や呼吸に異常が生じることがある

 

静脈内鎮静法は、ミダゾラムやプロポフォールといった鎮静剤を全身に継続作用させる麻酔法ですので、術中の管理を誤ると、過度の血圧が低下したり、呼吸の抑制が生じたりします。そのため、静脈内鎮静法を実施する際には、麻酔医や歯科医麻酔科医がモニターを見ながら全身管理を行います。

 

3-2 治療後にふらつくことがある

 

静脈内鎮静法は、手術が終わった後もしばらくはその効果が持続します。もちろん、手術が終わると鎮静剤に対する拮抗薬を作用させることで、その効果を取り除いていくのですが、元に戻るまでには個人差があります。ですから、治療後は意識がもうろうとしてふらつくことが考えられ、お車の運転などは控えるよう推奨しています。

 

4.環境が整っていればリスクは低くなる

 

上述したように、静脈内鎮静法にはいくつかのリスクがあり、血圧の低下や呼吸抑制などは非常に深刻なトラブルといえますが、治療環境が整っていれば、そういった状態に陥ることはまずありません。静脈内鎮静法というのは、どの歯科医院でも実施している麻酔法ではなく、それ相応の設備や人員を確保できる場所だけが行えるものといえるからです。

 

ですから、インプラント手術で静脈内鎮静法を活用している歯科医院というのは、当然、静脈内鎮静法を実施する際には歯科麻酔科医が立ち会い、全身管理を行っていますし、万が一、心停止などの偶発症が起こったとしても、それに対応できるような器材や技術を持ち合わせていますので、ご安心ください。

 

5.まとめ

 

このように、静脈内鎮静法にはリスクと呼べるものが存在します。歯科治療に対する不安感や恐怖心を取り除き、半分眠ったような状態でオペを終えられる麻酔法だけに、一見すると魔法のような処置法に見えますが、やはり必ずデメリットやリスクはついてくるものです。

 

とくに呼吸器や循環器に関わるリスクが予想されるため、実際にトラブルが生じたら深刻です。それだけに、施術する側も万全の体制で臨んでいますので、患者さんは安心して身をゆだねても良いといえます。むしろ、静脈内鎮静法を用いずにオペに臨んだ方がリスクの大きいケースに適応されることが多いですので、結果的に医療事故のリスクは低減しているといえます。

Q

骨造成とは

A

インプラント治療では、顎の骨の量や密度が非常に重要なポイントとなります。そのため、精密検査の段階で、患者さまの顎骨の状態は詳細に調べさせていただいております。そこで気になるのが、骨の悪い状態が判明したケースです。骨の幅や深さ、骨密度などが適切な量確保できなかった場合はどうなるのでしょうか。

 

1.足りない骨を補う処置

 

インプラント治療では、よく骨造成(こつぞうせい)という処置がとられます。これは事前検査によって、骨量などの不足が確認された患者さまに適応される外科処置で、骨が足りていない部分に、人工骨や自家骨を移植し、骨の造成をはかります。その結果、インプラント治療に耐えうるだけの骨量にまで回復すれば、いよいよインプラント治療をスタートさせることができるのです。そんなインプラントの骨造成法には、いくつかの種類があります。

 

2.GBR法

 

GBR法とは、骨再生誘導法とも呼ばれる施術法で、骨が不足している部分にハイドロキシアパタイトやリン酸カルシウムが豊富に含まれた人工骨や自家骨を移植します。メンブレンやチタンメッシュと呼ばれる仕切りを使って骨造成のスペースを確保し、人工骨などを埋め込みます。時間が経過するとともに、人工骨などが骨の造成を促し、正常な状態まで回復します。そんなGBR法は、インプラント手術に前もって行うパターンと、インプラント手術の最中に行うパターンとがあります。どちらになるかは、症例によります。

 

3.ブロック骨移植

 

ブロック骨移植とは、文字通りブロック状の骨を移植する骨造成法で、ベニアグラフトとも呼ばれています。その多くは、患者さま自身の体から採取した骨で構成されていますので、拒絶反応なども起こりにくくなっています。上の前歯のインプラント治療で行われることが多い骨造成法です。

 

4.垂直的骨造成術

 

垂直的骨造成術とは、オンレーグラフトとも呼ばれる術式で、臼歯部のインプラント治療でよく適応されます。こちらも患者さま自身の体から採取した骨を活用します。

 

5.その他の骨造成術

 

骨造成術には、その他サイナスリフトやソケットリフトなど、インプラントを治療する部位に応じて、様々な方法が開発されています。それぞれにメリットとデメリットがあったり、症例に応じた向き不向きがあったりするため、一概にどの方法が優れているとも言い切れません。

 

6.骨造成が必要になる理由とは

 

若年者の顎骨は、一般的にそれほど吸収が進んでいないため、骨造成が必要になることも多くありません。ただ、重度の歯周病を患っているケースでは、高齢者と同じような高度な骨吸収を起こしていることもあり、上述したような骨造成術が必要になることがあります。

 

一方、高齢者に関しては、まず加齢に伴う骨吸収が見られます。また、骨粗鬆症を発症していたり、歯周病が重症化していたりするケースも珍しくないため、大なり小なり骨造成が必要になることが多いです。ただし、あまりにも骨の状態が悪いケースでは、骨造成を行ってもインプラントに耐えうる状態まで回復できないことがあるため、別の治療法を選択することとなります。つまり、誰もがインプラント治療を受けられるというわけではないのです。

 

7.まとめ

 

おそらく、患者さまの中には「自分の骨はあまり良い状態ではないからインプラント治療は無理」と始めから諦めている方もいらっしゃるかと思いますが、その点はまず精密検査を受けてから判断してみましょう。骨造成術を適応することで、インプラント治療を行える可能性も残されています。最適な歯科治療を受ける上で大切なのは、沢山の選択肢があることです。そこから患者さまが受けたいと思う治療法を選ぶのが健全といえます。

Q

インプラントの通院頻度

A

インプラントは、いくつかのプロセスを踏みながら治療が進んでいきます。ですから、虫歯を削ってレジン充填をするように、即日で終わるようなことはまずありえません。カウンセリングにはじまり、精密診断を行って、その後も沢山の手順を踏んでいって、ようやくインプラントを埋入するオペへとたどり着きます。しかも、インプラントを埋入した後も上部構造を作製したり、長期にわたるカウンセリングも行っていったりしなければなりません。そこで気になるのがインプラントの通院頻度ですよね。

 

1.治療全体の流れを理解する

 

インプラントの治療期間について考える前に、まずはインプラントの治療全体の流れを理解していただきます。なぜなら、それぞれの治療プロセスで、通院頻度が異なってくるからです。まず、インプラント治療というのは、カウンセリングと精密検査から始まります。これらは1~2回の通院回数で終わりますので、特に通院頻度を考える必要はありません。複雑になるのはここからです。

 

2.顎の骨が足りないケース

 

精密検査を行って、インプラント治療を実施にするには骨の量が不十分と判断された場合は、インプラントオペに骨の移植が伴います。骨の移植にもいろいろな方法あるのですが、大まかに3~6ヶ月はかかるものとお考えください。通院頻度としては、月に1~2回程度です。これらの頻度は、施術する部位が上顎なのか下顎なのか、そして不足している骨量に応じて大きく変わってくるため、大まかな目安しかお伝えすることができません。

 

3.インプラントオペ

 

インプラントオペには、一回法と二回法の2種類があります。一回法であれば、通院の回数は1~2回で即日終わることもあれば、2週間に1度通院してもらうこともあります。ただ、一回法というのは適応症例が限られてきますので、今現在一般的なのは、二回法です。二回法は、通院回数が4~6回程度で、月に1~2回の頻度で受診することとなります。

 

4.上部構造の作製

 

インプラントを顎の骨に埋入することができたら、次は上部構造の作製です。いわゆる被せ物のような装置を作製するプロセスで、通院回数としては3~6回、通院頻度は月に1~2回程度となっています。これもまたケースバイケースで大きく変わってくるため、一概にはいえないのが現実です。

 

5.メインテナンス

 

インプラント治療のプロセスがすべて終了したら、今度はメインテナンスの時期に入ります。基本的に、インプラントのメインテナンスに終わりはありませんので、インプラントを使い続ける限り、定期的に検診を受けることとなります。メインテナンスの通院頻度としては、1年に2~4回程度ですので、それほど頻繁に通う必要はありません。とはいえ、これを怠ってしまうと、インプラントを口腔内で維持し続けることが困難となるため、メインテナンスの重要性を忘れないようにしましょう。

 

6.まとめ

 

このように、インプラント治療はケースに応じてやらなければならない処置や通院回数、通院頻度などが大きく異なるため、予めその回数や頻度を明言することは難しいといえます。ただ、上述した通り、1~2ヶ月で終わるということはまずありえません。また、インプラント体を埋め込んで、上部構造を装着しても、その後はメインテナンスの時期に入るだけで、通院の必要性は残りますので、いうなれば、生涯歯科を受診し続けることになるといえます。そうすることではじめて、インプラントを長持ちさせ、口腔内の健康も維持することができるといえます。インプラントは人工臓器のようなものですので、いつまでも大切に使っていきましょう。