Q

インプラントのメインテナンス

A

インプラント治療では、メインテナンスが重要になるという話はよく耳にしますよね。正直それは、入れ歯にしてもブリッジにしても同じことがいえるのではないか、と思われる方も多いかもしれません。確かに、入れ歯やブリッジも定期的にメインテナンスすることで、長く使い続けることが可能です。ただ、インプラントに関しては、その他の補綴装置以上に、メインテナンスが重要となります。ここではその理由について詳しく解説します。

 

1.その他の補綴装置との違い

 

インプラント治療は、その他の補綴装置とは決定的に違う点があります。それはフィクスチャーと呼ばれる人工の歯根を体の中に埋め込むという点です。厳密には、顎の骨に埋入するのですが、処置を施した後も、基本的には一生、顎骨内に存在し続けます。こういった歯科治療は、基本的に他にありません。入れ歯にしろ、ブリッジにしろ、口腔内に装着することは同じですが、あくまでそれらは歯列に被せているだけに過ぎないのです。

 

2.体は異物を排除するようにできている

 

インプラントの人工歯根は、金属でできています。これは本来、人体にとっては紛れもない異物であり、生体防御の機構が正常に働いていれば、排除しようと作用します。その結果、炎症反応などが生じるのですが、インプラント体に用いられるチタンは少し事情が異なります。チタンは人工関節にも使われている金属で、生体とは非常に相性がよく、幸運にも骨と結合する性質を備えています。これを専門的にはオッセオインテグレーションと呼んでいて、インプラント治療のかなめとなっています。オッセオインテグレーションが期待できるからこそ、インプラント治療が可能となっているのです。

 

3.インプラントは体の一部になる

 

オッセオインテグレーションが成功すると、人工歯根のフィクスチャーは、顎の骨と結合します。つまり、体の一部となるのです。この状態を維持することが、インプラントを長持ちさせる最大のポイントといえるでしょう。ただし、私たちの体はいつ、どのような反応を示すかは予測できません。例えば次の日には、インプラント体を異物とみなして排除しようとする反応が生じるかもしれません。そのきっかけとなるのが歯周病です。

 

4.歯周病のコントロールは最重要

 

インプラントのメインテナンスでは、歯周病を発症していないか、あるいは既に発症していた人は、病態が安定しているかなどを診査します。具体的には、歯茎の腫れや出血、歯槽骨の吸収などが生じていないかを肉眼だけでなく、レントゲン画像も活用して精査します。とくに注意すべきなのはインプラント周囲炎で、インプラントの周りに炎症が生じてしまうと、オッセオインテグレーションまで失われかねないのです。

 

5.専門家によるインプラントのクリーニング

 

インプラントの種類によっては、歯科医や取り外して、インプラントやアバットメントの状態をチェックしたり、付着した汚れを取り除いたりすることができます。こういったプロフェッショナルケアは、インプラントを長持ちさせる上で非常に重要であるといえます。また、セルフケアの状態なども歯科医師が把握できるため、定期的に専門家に診てもらうことは、非常に有益といえるでしょう。

 

6.まとめ

 

このように、インプラント治療におけるメインテナンスは、その他の補綴治療とは比較にならないほど重要な取り組みといえます。インプラントは自分自身の体の一部になっているという意識を持つことで、定期的なメインテナンスの意義を理解しやすくなるかと思います。インプラントを長持ちさせることはもちろんのこと、お口の健康のためにもインプラントのメインテナンスは継続して受けることをお勧めします。

Q

歯周病とインプラント治療

A

インプラント治療では、事前に精密な検査を実施することで、インプラント治療を適応して良いかどうかを判断します。その際、周囲に虫歯があるくらいなら、予め虫歯治療を済ませることで、インプラント治療へと移行できるのですが、歯周病がある場合は要注意です。なぜなら、インプラント治療と歯周病というのは非常に相性が悪いからです。

 

1.歯周病とは

 

歯周病とは、歯肉炎や歯周炎の総称で、歯周組織に炎症が生じる病気です。日本人の8割以上が罹患していると言われている歯周病ですが、個々の患者さんによって歯周病の進行度は大きく異なるため、歯周病にかかっているからといって、その時点でインプラント治療が難しくなるわけではありません。

 

2.歯肉炎は比較的軽度な歯周病

 

比較的軽度の歯周病を歯肉炎といいますが、歯肉炎は文字通り歯肉に炎症が生じる病気で、歯周組織の表層だけに病変が限局していますので、インプラント治療への影響はそれほど大きくありません。けれども、歯肉炎が確認されている時点で、すぐにインプラント治療へ移行することは難しく、まずは歯肉の炎症を改善させると同時に、口腔衛生状態を清潔に保てるよう、ブラッシング指導などを受けて頂きます。そうして、歯肉炎が生じないような環境が整えば、インプラント治療をスタートさせることができるのです。

 

3.歯周炎になると起こる歯周組織の変化

 

歯周病が歯周炎にまで悪化すると、いよいよ歯周組織の深い部分にまで炎症を始めとした病変が広がっていきます。具体的には、歯根膜に炎症が及び、歯を支えている歯槽骨は吸収されていきます。その結果、歯の安定性が失われ、グラグラと動揺するようになるのです。この状態では、歯肉や歯槽骨に分布している細胞の活性も低いため、インプラント体を埋め込んだとしてもすぐに脱落してしまうことでしょう。ですから、歯周炎を患っている人は、歯周組織の炎症や病的吸収などを治すことが絶対条件となります。

 

4.吸収された歯槽骨は再生できる?

 

歯周炎によって吸収されてしまった歯槽骨は、骨造成という処置を施すことで再生することが可能です。ですから、今現在、重度の歯周炎を患っていたとしても、適切な処置を施し、骨の状態を良くすることで、インプラント治療を受けることも可能といえます。そのためには当然、インプラント体を埋め込んだあとも、歯周病が再発しないよう、さまざまな努力が必要となります。

 

5.インプラント自体が歯周病を起こしやすい?

 

インプラント治療に伴うトラブルとして、インプラント周囲炎という病気が挙げられます。インプラント周囲炎とは、その名の通りインプラント周囲に炎症が生じる病気で、一種の歯周病といえます。これは、インプラントの上部構造などに歯垢や歯石がたまりやすい傾向が認められるためであり、天然の歯とは清掃性が異なることを意味しています。

 

ですから、インプラントを装着したあと、その他の歯と同じようなケアを施していては、歯周病のリスクが高まりますので、より丁寧なブラッシング等を継続していく必要がでてくるといえます。とくに、インプラント治療前に歯周病を患っていた人は要注意といえるでしょう。

 

6.まとめ

 

このように、インプラント治療と歯周病には密接な関係がありますので、歯周病のリスクが高い人や、今現在歯周病にかかっている人は、インプラント治療を受けるにあたって、オーラルケアを徹底することを決意する必要があります。また、歯科医院におけるメインテナンスも定期的に受けていくことも欠かすことができません。そうしたことを意識した上で、インプラント治療をスタートさせましょう。

Q

インプラントの妥当な金額は?

A

インプラント治療は、原則自費診療であるためか、歯科医院によって治療費が異なります。そこで前もって知っておきたいのが、インプラント治療の適正価格です。ここでは、あくまで目安ではありますが、インプラントの妥当な治療費について詳しく解説します。

 

1.なぜ保険が適用されないのか

 

インプラント治療が高くなる原因のひとつに、保険が適用されないという点が挙げられます。これだけ素晴らしい治療法なのだから、保険適用してくれても良いのでは、と思われる方も多いでしょうが、やはりインプラント治療はまだまだ先進医療で、材料や必要となる設備にも多額の費用がかかるため、全ての症例にインプラント治療を保険適用させていたら、国の医療費が膨らんでしまい、大変なこととなってしまいます。

 

2.自由診療だから料金設定も自由に

 

インプラントの治療費にばらつきが生じる理由として、自由診療ならではの事情もあります。保険診療であれば、全国どの歯科医院で同じ形の入れ歯を作っても請求される金額は同じですが、自由診療となると、価格の設定は各歯科医院に任せられます。極端に安い価格を設定する歯科医院もあれば、極端に高い価格を設定する歯科医院もあります。そんな中で知りたいのは、インプラント治療において妥当といえる金額ですよね。

 

3.治療費の平均は32万5千円

 

インプラント治療というのは、単一のシステムしか存在しないわけではなく、今現在100種類以上のシステムが運用されています。ですから、どのシステムを採用するかだけでなく、使用する材料の選択や適応する症例によっても、治療費は大きく変わってくるため、インプラント治療の妥当な金額を一概にいうことはできません。ただ、日本で実施されているインプラント治療における治療費の平均額は判明しています。

 

2011年に日本インプラントセンターが発表した内容によると、インプラントの平均治療費は32万5千円とのことでした、確かに、多くのインプラント治療は30~50万円程度の費用がかかるため、ある意味で妥当な金額といえます。ちなみにこの金額は、インプラント1本あたりにかかる費用です。

 

4.特別な材料を使用するインプラント治療

 

インプラント治療では、ジルコニアやチタンといった、通常の歯科治療ではなかなか使用することない高価な歯科材料を使います。チタンに関しては、人工関節にも用いられており、医療素材としての安全性も確立されているため、その他の選択肢はないといえるでしょう。

 

5.構成するパーツが多い

 

ブリッジや入れ歯というのは、人工歯と歯茎の部分から成る補綴装置ですが、インプラントには人工歯根という、他の歯科診療では見られないパーツが必要となります。しかも人工歯根であるフィクスチャーは、インプラントオペと呼ばれる外科処置を必要としたり、事前の精密検査においては、CTを使った画像撮影やシンプラントと呼ばれる特別なシミュレーションソフトなども活用したりするため、必然的に治療費がかさんでしまうこととなっています。

 

6.30万円は決して高くない?

 

このように、インプラント治療が他の歯科治療と比べると極端に高くなるのは、それなりに理由があるからです。自由診療であるだけでなく、使用する材料や診療に必要となる設備や器具なども、特別なものを用意しなければなりません。そういった意味で、インプラント治療にかかる費用が平均で約30万円というのは、必ずしも法外に高い金額ではないといえるのではないでしょうか。ただし、このような平均額を著しく逸脱するようなケースは妥当とは言い難いので、その内訳を明確にしてもらうなり、セカンドオピニオンを求めるなりして対応することをお勧めします。

Q

インプラントの土台、フレームは、ジルコニア、チタンなど何がいいの?

A

インプラントは、隣の歯を削って支えとしたり、クラスプを引っ掛けて固定したりする必要のないシンプルな補綴装置ですが、そのパーツは意外に複雑です。また、使用される材料もパーツによって変わってきます。ここではそんなインプラントに使われる材料について詳しく解説します。

 

1.インプラントは3つのパーツから成る

 

インプラントは主に、3つのパーツから構成されています。

 

1-1 インプラント体(人工歯根)

 

まず、インプラントの心臓部ともいえるインプラント体は、フィクスチャーや人工歯根などいろいろな名前で呼ばれていますが、インプラント治療において最も重要なパーツといえます。また、その他の歯科治療にはない、インプラント特有のパーツでもあります。そんなフィクスチャーは、基本的にチタンという金属で作られています。これは、チタンが顎の骨と結合する性質を有しているためです。人工関節にも使われている素材で、人体への安全性も保証されています。

 

1-2 上部構造(人工歯)

 

インプラント治療でも、その他の補綴治療と同様に、人工歯の部分があります。専門的には上部構造と呼ばれており、天然歯においては歯冠の部分に相当します。そんなインプラントの上部構造には、ジルコニアが用いられることが多いです。ジルコニアは、とても硬い素材で、見た目の色や質感なども天然の歯に近いと言われています。そのため、インプラントの上部構造には最適な材料といえるでしょう。

 

1-3 アバットメント

 

インプラント体と上部構造をつなぎ合わせるネジのようなパーツに、アバットメントと呼ばれるものがあります。アバットメントは、インプラントの歯冠部と歯根部を結合させる上で欠かすことのできないパーツですので、使用する材料も適したものを選ばなければなりません。具体的には、インプラント体を同じチタンが使用されたり、上部構造と同じジルコニアが使用されたりします。いずれも異なるメリットとデメリットがあるため、ケースに応じて使い分けられます。

 

2.生体親和性の高さが要求される

 

インプラント治療に用いられる材料は、基本的に生体親和性の高さが要求されます。なぜなら、インプラント体は顎の骨と直接結合し、アバットメントや上部構造に関しても歯周組織との密着性が高いパーツなるからです。これらがもし、生体に対して何らかの為害性を持っていると、インプラントはたちまち脱落してしまうことでしょう。私たちの体は異物を判断したものを生体外へ押し出すメカニズムが備わっているからです。そういった意味では、生体親和性の高いジルコニアやチタンは欠かすことのできない歯科材料といえます。

 

3.審美性の高さも併せ持った材料

 

上部構造やアバットメントに用いられるジルコニアは、丈夫で生体親和性が高いだけでなく、審美性も兼ね備えた素晴らしい歯科材料です。例えば、上部構造だけでなくアバットメントにもジルコニアを用いることで、金属色の透過が抑えられるため、審美性がさらに天然歯へと近づくこととなります。

 

4.まとめ

 

このように、インプラント治療に使われる歯科材料というのは、適切な処置を施そうとすれば自ずと限られてきます。ジルコニアやチタンは欠かすことのできない素材ですので、その他の材料を使用する際には、まずその理由についてきちんと確認した方がよいといえます。もちろん、ジルコニアやチタン以外にも、インプラントに適した材料はありますので、これらを用いないからといって、決して間違った治療というわけではありません。

Q

入れ歯とインプラントどっちがいいの?

A

歯の欠損症例に対する治療法の選択肢として、入れ歯とインプラントがよく比較対象にされます。どちらにもメリットとデメリットがあるため、治療選択に迷ってしまう患者さまも少なくありません。ここではそんな入れ歯とインプラントの違いに着目し、どちらがより優れた治療法なのかを詳しく解説します。

 

1.治療費の比較

 

まず、この2つの治療法を治療費の面から比較してみましょう。基本的に入れ歯は、保険が適用されるため、比較的安価な費用で補綴物を製作できます。もちろん、使用する材料や装置の設計にこだわれば、保険適用外となりますので、その点はご注意ください。

 

次にインプラント治療は、原則的に保険が適用されません。ですから、全額自費診療となるため、必然的に治療費は高くなる傾向にあります。また、インプラントでは純チタンなどの貴重な金属を使用するため、歯科治療の中でもかなり高額な治療に分類されます。そのため、両者を治療費の面から比べると、入れ歯の方が経済的に優れているといえます。

 

2.審美性の比較

 

見た目の美しさである審美性の観点から2つを比較すると、これは間違いなくインプラントに軍配が上がります。インプラントは人工歯根を埋め込んで、その上にジルコニアなど審美性の極めて高い上部構造を設置するため、一見すると天然の歯と見分けがつきません。

 

一方、入れ歯には歯根の部分が存在せず、金属製のクラスプや義歯床などによって口腔内に固定するため、極めて大きな補綴装置となっています。また、保険適用で作られる入れ歯には、ジルコニアやセラミックのような高価な材料は使えませんので、必然的に安価なレジン歯となり、天然の歯とは見た目が異なることとなります。そういったことから、審美性に関してはインプラントの方が優れているといえます。

 

3.機能性の比較

 

入れ歯もインプラントも、失った歯の機能を回復されることを主な目的としていますので、きちんと噛めなければ意味がありません。もちろん、入れ歯にしてもインプラントにしても、適切な方法で作製されれば、噛むという機能を補うことはできるのですが、どちらがより天然の歯の咀嚼機能に近いかというと、これも間違いなくインプラントであるといえます。なぜなら、インプラントには人工歯根があるからです。

 

私たちの歯は、ものを噛んだ時にその圧力を歯根で感じたり、緩和したり、支えたりしていますので、その機能が重要であることはいうまでもありません。インプラント治療では、そんな重要な歯根をチタン製の人工物ではりますが、限りなく本物に近い形で復元できるため、咀嚼機能も著しく回復します。

 

その点、入れ歯には歯根の部分が一切存在しませんので、噛んだ際の違和感は大きいです。本来歯根で支えるはずの咬合圧を周囲の歯や歯茎、それから口蓋などの口腔粘膜が支持するため、ものを噛んだ時の感覚が大きく違ってくるのです。そのため、機能性の面でもインプラントが優れていると言わざるを得ないです。

 

4.治療期間の比較

 

最後に治療に要する期間ですが、これは入れ歯の方が短いです。インプラント治療というのは、必ずインプラント体を埋入するためのオペを伴いますので、口腔内や顎の骨の状態が適正なものになるまで、さまざまな処置を必要とすることが多いです。また、インプラント体を埋め込んだあとも、それが顎骨内に定着するまでに長い時間を要します。ですから、治療期間の面から比較すると、圧倒的に入れ歯の方が優れているといえるでしょう。

 

5.まとめ

 

このように、入れ歯とインプラントをいろいろな面から比較すると、それぞれ一長一短であることがわかりますので、どこに重点を置くかによって優劣も変わります。そうしたことも踏まえた上で、治療の選択を行うことをお勧めします。

Q

静脈内鎮静法とは

A

歯科治療には、痛みや不安などがつきものですので、どうしても歯科医院から遠のいてしまう人がいらっしゃいます。とくに重症化した虫歯や歯周病治療となると、治療に伴う侵襲性は高くなりますので、余計に不安感や恐怖心が強まっていくものです。その結果、歯科治療恐怖症といった病気にかかるケースもあるくらいですので、歯科医院側もきちんとした配慮が必要であることを自覚しています。例えば、静脈内鎮静法と呼ばれる麻酔処置を施すことで、そういった不安感や恐怖心を和らげることが可能といえます。

 

1.痛みをなくすわけではない

 

麻酔と聞くと、痛みをなくしたり、痛みの度合いを減らしたりする作用が期待されますが、静脈内鎮静法の効果は少し違います。というのも、静脈内鎮静法を施したからといって、歯科治療に伴う痛みが軽減されるわけではないからです。ではどういった効果をもたらすのかというと、静脈内鎮静法では文字通り「鎮静作用」が期待できます。つまり、不安や恐怖を感じている心を鎮める作用を発揮するのです。

 

2.鎮静作用とは?

 

鎮静作用と言われても、あまりピンとこない方もいらっしゃるかと思います。そこで、歯科治療を受ける直前の心理状態を思い浮かべてみましょう。受付から名前を呼ばれ、歯科用の診療チェアに横たわり、今まさに、歯を削るための歯科用ドリルが回転した時のことをイメージしてみてください。歯を削られた時の痛みや不快感などが想起されて、動悸が激しくなるのを感じるかと思います。そうした時に感じる不安や恐怖が極端に強くなると、血圧などが上昇し、歯科治療そのものを続行することが難しくなるケースも珍しくないのです。そんな心の動揺や精神の乱れを落ち着かせる作用が「鎮静」です。

 

3.どんな時に使われるの?

 

さて、鎮静作用を有する静脈内鎮静法では、歯科治療では具体的にどんな場面で使われているのでしょうか。一般的に使われることが多いのが、インプラントオペのような大掛かりな歯科処置です。インプラントオペでは、歯肉をメスで切開したり、顎骨にドリルで穴をあけたりしますので、非常に侵襲性が高いといえます。そういった心身ともに負担の大きい歯科治療に対しては、予め静脈内鎮静法で心を落ち着かせてもらうことが多いです。

 

それから歯科治療恐怖症を患っている患者さまにも、通常の歯科治療において静脈内鎮静法を適応することがあります。歯科処置自体は虫歯治療や歯周病治療など、侵襲性がそれほど高くないのですが、それでも患者さんによっては精神的負担が大きい場合があり、そういったケースでは静脈内鎮静法を活用することが珍しくありません。

 

その他、発達障害などを持ったお子さまに対しても、静脈内鎮静法を適応することがあります。例えば、自閉症やADHDの患者さまは、歯科治療中に急な動作を起こすことがあります。すると、歯科用のタービンなどで口腔内を傷つけるリスクにもなりますので、静脈内鎮静法で心を落ち着かせてもらってから、治療をスタートさせるのです。

 

4.どんな状態になるの?

 

さて、歯科治療に対する不安や恐怖を取り除くのに有用な静脈内鎮静法ですが、実際、患者さまはどういった精神状態になるのか気になりますよね。よく聞く感想としては「半分眠っているような状態」です。ですから、気づいたら歯科治療が終わっていたという患者さまも数多くいらっしゃいます。

 

5.まとめ

 

静脈内鎮静法は、歯科治療をスムーズに進めていく上で非常に有用な麻酔処置ですので、治療に対する恐怖心や不安感が強い方は、一度試されても良いかと思います。多くの歯科医院では、患者さまが希望すれば実施してくれることかと思います。

Q

インプラントオーバーデンチャーとは

A

インプラントには、いくつかの治療法があることをご存知でしょうか。顎の骨にフィクスチャーと呼ばれるチタン製の人工歯根を埋めるという点は全てに共通しているのですが、上部構造には症例に応じた複数の形態が存在します。その中でもインプラントオーバーデンチャーは、少し特殊なインプラント治療といえます。

 

1.インプラントの総入れ歯

 

インプラントオーバーデンチャーは、簡単にいうとインプラントの総入れ歯です。ですから、全ての歯を失った症例で適応することができます。ここで気になるのが、全ての歯を失ったということは、全ての歯根をインプラントで補うのかという点ですよね。つまり、上下で28本あった歯の全てを人工歯根であるフィクスチャーの埋入で補綴するのか、ということです。

 

2.数本のインプラントで全ての歯を支える

 

インプラントオーバーデンチャーで埋入するインプラントは数本に限られます。一般的には上下それぞれ4本ずつのインプラント体を埋め込んで、総入れ歯を装着することが多いです。ですから、28本もインプラント体を埋め込む必要はないといえます。

 

3.どんな総入れ歯を被せるの?

 

インプラントオーバーデンチャーで被せる総入れ歯は、通常の総入れ歯とは少し異なります。なぜなら、本来総入れ歯というのは、支えを顎堤と呼ばれる、もともと歯があった部位や口蓋などに求めますが、インプラントオーバーデンチャーではその必要がありません。なぜなら、そういった口腔粘膜とは比較にならないほど安定性の高い人工歯根があるからです。顎堤に埋め込んだ複数本のフィクスチャーを支えとし、通常の総入れ歯よりも少し小型なものを設置させる形で口腔内に装着します。

 

4.総入れ歯と何が違うのか?

 

全ての歯を失った症例で、総入れ歯とインプラントオーバーデンチャーの2つの選択肢が提案されたケースを想定します。

 

4-1 安定性が違う

 

インプラントオーバーデンチャーには、人工歯根が存在しますので、安定性が比較的高いです。一方、総入れ歯の方は人工歯根がありませんので、安定性が低いといえます。

 

4-2 噛み心地が違う

 

総入れ歯を装着したことがある方ならイメージできるかもしれませんが、顎堤や口蓋などの口腔粘膜に支持してもらっている総入れ歯は、ものを噛んだ時の感触があまりよくありません。不安定なこともあり、効率的に咀嚼できないだけでなく、食材そのものが持つ食感なども楽しみにくくなっているのです。一方、インプラントオーバーデンチャーは、顎堤にしっかりと固定されていますので、噛み心地は良好です。

 

4-3 設計の自由度が違う

 

総入れ歯というのは、人工歯の位置や義歯床の形態などが、患者さまの口腔内の状態でほぼ決められています。ですから、場合によっては審美性が犠牲になることもあり、患者さまの中には入れ歯のできに満足できない方もいらっしゃいます。一方、インプラントオーバーデンチャーであれば、総入れ歯と比較して設計の自由度が高いため、患者さまの満足度は高まる傾向にあります。審美性と機能性の両方を重視した設計も不可能ではありません。

 

5.まとめ

 

インプラントオーバーデンチャーは、総入れ歯とインプラントが組み合わさった補綴物です。全ての歯を失った症例にも適応でき、従来の総入れ歯よりも安定性や機能性、それから審美性も優れています。ただ、保険が適用されないという点でデメリットは存在しますので、インプラントオーバーデンチャーが持つメリットとデメリットを勘案した上で、治療を検討されてみてはいかがでしょうか。実際に歯科医院などで模型を見せてもらうとさらにイメージがわきやすくなるかと思います。

Q

インプラント治療後のケアの重要性

A

単なる虫歯治療では、虫歯になった部分にインレーやクラウンなどを装着して治療は完了しますよね。適切な処置が施されたり、セルフケアを徹底していたりする症例では、その後、10年も20年も歯科を受診せずとも、問題なく使い続けることが可能です。ただ、インプラント治療になると話は変わります。セルフケアが重要であるということは同じですが、定期的なメインテナンスも欠かすことができないのがインプラントなのです。

 

1.インプラントのセルフケアとは

 

インプラントのセルフケアといっても、特別な処置が必要になるわけではありません。きちんとしたブラッシングを行い、歯間ブラシやフロスを活用するなどして、プラークや歯石の沈着を抑えることが基本となります。天然の歯と異なる点は、汚れやすさです。インプラントは非常に優れた補綴治療ですが、顎の骨に埋まっている歯根も口腔内に露出している歯冠も全て人工物です。これらを天然の歯と同じ意識で磨いていたら、十分な清掃効果は得られません。

 

2.インプラントは傷がつきやすい

 

インプラントが汚れやすい理由に、傷のつきやすさがあります。もちろん、天然の歯の最表面を覆っているエナメル質も、強いブラッシング圧などによって傷がつくのですが、インプラントの上部構造には再石灰化などの修復機構が備わっていませんので、生じた傷はどんどん蓄積していきます。そうした傷が汚れを沈着させやすくさせるため、汚れやすい傾向はさらに強まることとなります。ですから、汚れが付着しやすくはありますが、硬い歯ブラシや強いブラッシング圧で闇雲に歯磨きするのは危険です。つまり、天然歯以上に繊細なセルフケアが必要となるといえるのです。

 

3.歯科医院でのプロフェッショナルケアが効果的

 

日頃からセルフケアを十分に行っていても、やはり磨き残しなどが堆積していくものです。また、インプラントは設置の方法によっては歯科医師が取り外すことができます。そういったタイプのインプラントなら、定期的に上部構造を取り外してもらい、インプラント全体の清掃を行ってもらうことが大切です。インプラントの各パーツの清掃状態を見てもらうことで、セルフケアの改善点なども見えてきます。

 

4.メインテナンスの重要性

 

インプラント治療を受けると、必ずといって良いほど、定期的なメインテナンスを推奨されます。メインテナンスのスパンは症例や歯科医院の治療方針によっても異なりますが、数ヵ月に1回程度ですので、是非とも受けることをお勧めします。

 

インプラントのメインテナンスでは、インプラントに審美的な問題が生じていないか、顎の骨との結合状態は良好か、また周辺の歯肉に炎症などが生じていないかなどを診ていきます。これらはセルフケアでは対応しきれない領域であるため、必然的に歯科医院でのメインテナンスが不可欠となるのです。

 

5.治療後に放置し続けたらどうなるの?

 

インプラント治療後、特段セルフケアなどに配慮をせず、メインテナンスも一切受けなかった場合、予後不良となるケースは珍しくありません。やはり、虫歯にインレーを詰めたり、クラウンを被せたりするような治療とは質が異なりますので、放置するのは賢明ではありません。もちろん、顎骨の状態や口腔衛生状態が良好で、何もせずに数十年インプラントを使い続けられるケースもありますが、稀な方だといえます。それくらいインプラントにはセルフケアやプロフェッショナルケア、それから歯科医院でのメインテナンスが重要といえるのです。今現在インプラント治療をご検討中の方は、その点を理解した上で治療の選択をしましょう。

Q

インプラントを長持ちさせる方法

A

インプラント治療には数十万の治療費と数ヵ月にもおよぶ治療期間を要しますので、できれば長く使い続けたいものです。入れ歯とは異なり、一度装着したらそう簡単には修理したりすることができませんので、セルフケアも重要となってきます。ここではそんなインプラントを長持ちさせる方法について詳しく解説します。

 

1.インプラントは汚れやすい?

 

インプラントは、見た目も噛み心地も限りなく天然の歯に近いです。おそらく、使い続けていくうちに、天然の歯と同じ感覚を持つようになることでしょう。けれども、インプラントもあくまで人工の歯と人工の歯根からなる補綴物ですので、天然の歯とは異なります。とくに歯垢や歯石のつきやすさは、天然の歯と大きく違うため、注意が必要です。

 

2.セルフケアを徹底する

 

インプラントはセラミックやジルコニアなどで作られた被せ物を装着します。いわゆるクラウンと呼ばれるものとほぼ同じで、専門的には上部構造という名前が付けられています。そうした被せ物というのは、天然の歯よりも自浄作用が劣り、歯垢が堆積しやすいため、普段のセルフケアは丁寧に行う必要があります。歯ブラシだけでなく、フロスや歯間ブラシなども活用しながら、毎回しっかりと汚れを落としていきましょう。そうしたセルフケアを怠ると、インプラント特有の病気を発症することも珍しくありません。

 

3.インプラント周囲炎

 

インプラント治療を受けた患者さまには、インプラント周囲炎という病気が発症することがあります。インプラント周囲炎とは、インプラントを埋入した周囲の歯茎に炎症が生じる病気で、一種の歯周炎といえます。インプラント治療を受けるとなぜ歯周炎を生じやすくなるのかというと、それはインプラントが天然歯と比べて歯垢や歯石がたまりやすい傾向にあるからです。インプラントは見た目や噛み心地こそ天然の歯に類似していますが、清掃性に関しては悪くなる傾向にあるのです。ですから、天然の歯を磨くようなブラッシングでは、毎日少しずつ歯垢や歯石が沈着していき、やがては歯周病を引き起こす原因となるのです。

 

4.インプラントにとって歯周病は大敵

 

インプラント治療を受けるにあたって、顎の状態や歯周疾患の有無についてものすごく配慮がなされるかと思いますが、これは歯周病による顎骨の吸収などがインプラントの寿命を縮めることになるからです。インプラント体は顎の骨の中に埋入され、正常の骨の営みによってオッセオインテグレーションが起こることで、顎骨内に定着します。これがもし歯周病によって顎の吸収が生じたらどうなるでしょうか。インプラント体はオッセオインテグレーションによる支えを失い、やがては脱落してしまうのです。それだけに、インプラントを長持ちさせるのであれば、インプラント周囲炎を始めとした歯周疾患は絶対に避けなければならないといえます。

 

5.メインテナンスを欠かさず受ける

 

インプラント治療は、インプラント体を埋入して上部構造を装着したら終わりではありません。むしろ、そこからが始まりといえます。インプラントを長持ちさせるためには、定期的なメインテナンスを欠かさず受け、顎の骨の状態やインプラントの清掃状況なども専門家に経過観察してもらう必要があります。そうした定期検診を受けることで、問題点が見つかったとしてもすぐに対処することができ、インプラントの寿命を延ばすことも可能なのです。

 

6.まとめ

 

このように、インプラントはセルフケアおよび歯科医院で受けるメインテナンスが非常に重要な補綴治療ですので、長持ちさせるのであれば、それらを意識した上で大切に使っていきましょう。

Q

顎の骨が少ないとインプラント手術は受けられないの?

A

インプラント治療を検討する際には、事前に精密検査を実施して、インプラント手術に適した顎の状態なのかを調べる必要があります。その際、レントゲン撮影だけでなく、歯科用CTを用いた検査も実施され、顎の骨の密度や幅、深さなどを見極めるのですが、場合によって歯インプラント手術を適応できないケースもあり得るのです。

 

1.なぜ顎の状態を調べるのか

 

インプラント治療というのは、顎の骨のチタン製のネジを埋め込む特殊な治療法ですので、顎の状態というのは、非常に重要な要素といえます。例えば、インプラント体という人工歯根を埋める際、顎の骨の深さが足りなかったらどうなるでしょうか。間違いなく埋入した時点で、顎の骨を貫き、周囲の組織を傷害することとなります。ですから、インプラント治療を適応する時点で、チタン製のネジであるインプラント体がしっかりと治まる大きさの顎骨がなければ、治療を実施することが物理的に不可能といえます。

 

2.顎の骨の密度も重要

 

顎の骨において、インプラント体が収まるための幅と深さが最低限必要なことは理解しやすいかと思いますが、では骨密度に関してはいかがでしょうか。インプラント治療では、事前に骨密度も調べ、インプラント手術に適した状態かを判断します。これは、インプラント体を埋入したあとの骨の変化に着目するとわかりやすくなります。

 

3.インプラントは顎の骨と結合する

 

インプラント体はチタン製の人工歯根で、そのすべてが金属で作られていますが、顎骨に埋入したあと、実は骨組織と結合するのです。これを専門的にはオッセオインテグレーションと呼んでおり、人工関節などでも同じ原理を利用して治療が実施されています。歯科治療においてはとても特殊な原理を用いた処置法ですが、このオッセオインテグレーションが生じなければ、インプラント治療自体が失敗するものとお考えください。

 

4.骨密度が低いとインプラントが脱落する?

 

さて、骨密度が低い場合は、インプラント治療が難しくなるとのことでしたが、これはオッセオインテグレーションが起こりにくくなることと関係しています。オッセオインテグレーションという生理現象は、骨組織が正常に機能した状態でなければ、十分に起こらないため、骨密度が低下したようなケースでは、オッセオインテグレーションが上手く起こらず、インプラント体が顎の骨に定着できずに脱落してしまうのです。

 

5.骨の状態を改善すればインプラント手術は受けられる

 

ここまで、インプラント手術を実施する上で、骨の大きさや深さ、幅、密度が重要になることを述べてきましたが、例え骨の状態が悪かったとしても、インプラント手術の適応から外れるわけではありません。要は、不足している骨を造成すれば良いだけの話なのです。骨造成には、自家骨を使ったり人工骨を使ったりといろいろな方法が考えられますが、それらを不足している部分に移植することによって、インプラント手術に耐えうる顎骨をつくることが可能です。

 

6.まずは精密検査を受けることが大切

 

インプラント治療を検討されている方は、事前に必ず精密検査を受けるようにしましょう。レントゲンだけでは正直不十分ですので、歯科用CTによる画像診断も欠かすことができません。もしもCTを用いた画像診断やシンプラントのようなシミュレーションソフトを活用していないような歯科医院であれば、他を探した方が良いかもしれません。インプラント治療においてはそれくらい事前診断が重要な要素となってくるのです。インプラントは何年も使い続ける補綴装置ですので、できればベストな状態で埋入しましょう。

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